芝地の雑草の見分け方と防除 (20)
−ハルガヤ−
<はじめに> 今回はイネ科雑草のハルガヤ(春茅)についてみる。ハルガヤの属名のAnthoxanthum は‘黄色い花’の意。種名のodoratumは‘芳香がある’という意味で、全草にクマリンを含み、桜餅のような甘い香りがする。英名はSweet vernalgrassという。牧草として栄養は乏しいが、乾草に混ぜると家畜の食欲を増進する効果があるようで、ヨーロッパからシベリア原産で、明治初期に北海道に導入されたが、野生化し、全国に分布する帰化植物である。 園芸ではバニラグラスと呼ばれ、芳香を利用するハーブとして扱われている。 <共通点> イネ科で葉は線形。クマリンの芳香をもつ。4つの頴からなる小穂(厳密には3小花)。 <見分け方> 植物体の大きさ、茎の分枝、包頴の毛、芒の出方などで見分ける。 <その他の類似雑草> ヒメハルガヤAnthoxanthum puelii Lec. et. Lam.:一年草。ヨーロッパ原産帰化植物。乾けばクマリンの香りがある。ハルガヤに比べ全形小さく、茎は20p程度で、時に分枝する。花序は長さ1〜4pと小さく、第一、二穎はともに無毛。第三穎の芒も小穂の外に伸び出す(小穂の先に2個のノギが見える)。 <発生生態> 耐寒性も耐乾性もあり、繁殖力旺盛である。日当たりのよい所を好み、乾燥した土壌や他の草が育たないような酸性土壌でも生育する。 冬枯れした芝の中で株化して、群落を形成したりするため、プレーの邪魔になる。 秋から春にかけて発生した個体が春から夏にかけて出穂・開花(4〜7月)し、花粉症の原因ともなる。地上部は夏以降枯死してわからなくなり、根茎と種子で越夏する。 <防除法> ハルガヤの発生場所は刈り込み頻度の低い法面ラフ、ティーグランド周りに多い。フェアウェイや平面ラフに発生が少ないのは、春、秋にイネ科対象の土壌処理剤の使用や、刈り込みにより発生が抑えられていると考える。 ハルガヤの群落を作ってしまうと周りに広がることが考えられるので、穂を付ける春から初夏にかけてこまめに刈り込みを行い、種子生産を抑えることが必要である。 除草剤による防除では、秋に種から発生するものに対して土壌処理剤が効果的と考えるが、株化していたものが発生してくるものには茎葉処理剤の混用も必要である。ただし株化したものは完全に枯死するまで至らないことが多いが、 <参考文献> 長田武正著:原色日本帰化植物図鑑(1976,保育社) 廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン) 牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館) 大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物U(1967,保育社) 大井次三郎著:日本植物誌顕花編(1978、至文堂) 浅野貞夫著:原色図鑑芽ばえとたね―植物三態/芽ばえ・種子・成植物―(1995, 全国農村教育協会) 岩槻秀明著:街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本(2006,秀和システム
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