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目次

1紅色雪腐病



病名 紅色雪腐病
英語名 Pink snow mold
学名 Microdochium nivale
病原菌 菌糸幅:1.6~3.4μm
分生子:7.4~16.0×2.1~3.4μm
通常2隔壁
生育温度範囲:-5~25℃
最適温度範囲:22℃
被害芝草 数多くの芝草を侵す

*積雪の有無による名称の違い
本病は同一の病原菌(Microdochium nivale)によって起こるが、雪で覆われた状態で発生する場合は「紅色雪腐病(Pink Snow Mold)」、雪のない環境で低温多湿が続いて発病する場合は「ミクロドキウムパッチ(Microdochium Patch)」と呼ばれる。実質的には同じ病害であり、名称のみを使い分けている。




2病原菌特徴


病徴

紅色雪腐病は、直径10~50cm程度の円形パッチを形成し、周縁部が淡桃色~紅色になるのが特徴である。複数のパッチが発生すると、時間の経過とともにそれらが融合し、さらに大きな不整形パッチへ拡大することがある。パッチの中央部では葉先がしおれて生育が弱り、最終的には枯死に至ることが多い。他の雪腐病で見られる菌核が形成されないため、診断時の大きな目印になる。
積雪のない地域でも、直径10cm前後の褐色小型でその後融合して赤褐色となり、やがて枯死する。


発生時期

この病気は主に気温が低い季節(晩秋から早春)に発生しやすく、積雪の有無にかかわらず発病する点が特徴である。雪で覆われたまま土壌が凍結しない状態が続くと、融雪後にパッチが急激に拡大する場合がある。一方、積雪がなくても低温・多湿な条件が続けば同様の症状が確認される(ミクロドキウムパッチ)。


発生条件

サッチが厚く堆積したり、排水不良によって芝生が長時間湿った状態になると、病原菌の活動が活発になりやすい。火山灰土壌は一般的に表面排水が良好とされるが、地域や土壌層の性質によっては水分が停滞しやすく、過湿が長引けばパッチの拡大要因となる。また、窒素肥料が不足すると芝の活力が低下し感染リスクが高まる。さらに、ミクロドキウムパッチは播種後間もないターフでの発生が多いため、オーバーシードやインターシード後の管理には注意が必要である。




3防除


耕種的防除

  • 肥料バランスの管理: 肥料不足を避けると同時に、窒素(N)およびリン(P)肥料の施用量に注意する。秋期から冬期にかけては、過剰な窒素施用が病気のリスクを高めるため、適正な量を守ることが重要。
  • 融雪促進: 融雪を早めるために、木炭粉末や融雪剤などを活用し、積雪下での過剰な湿度が長引かないようにする。
  • 排水性の向上:過度な湿潤環境を作らないようにする。
  • ターフ管理の最適化:晩秋の落ち葉・枯葉の放置は病気の温床になりやすい。不要な植物残渣を取り除くことで発生リスクを下げられる。

薬剤防除

  • 積雪前の予防散布:根雪になる前(11月下旬など)に予防的に殺菌剤を散布することで、積雪下での感染拡大を抑えられる。
  • 発生初期での対応:非積雪地では、症状が現れた段階で薬剤を散布する。
  • 融雪後の散布:融雪後に病斑が目立つ場合は、状況を見て治療的な薬剤散布を行う。気温上昇による自然回復も考慮し、短期間に殺菌剤を何度も散布するなどの過剰な対応は避ける。



4参考写真


病原菌(Microdochium nivale)の菌糸(矢じり)

病原菌(Microdochium nivale)の分生子(矢印)



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