雑草DB

芝地の雑草の見分け方と防除 (14)


-イヌムギとカモジグサ-

<はじめに>
今回はイネ科のスズメノチャヒキ属のイヌムギとエゾムギ属のカモジグサについて述べる。
スズメノチャヒキ属の属名Bromusは‘まぐさ’、種名catharticusは‘下剤の’という意味である。和名のイヌムギは麦に似ているが穀物としては役に立たないのでこの名がついた。南アメリカ原産で、明治初年に輸入されたものが、繁殖力旺盛で日本各地に広まった。

カモジグサは当初カモジグサ属Agropyron(‘野生のコムギ’の意)とされていたが長田によってエゾムギ属Elymus(ギリシャ語でelyo‘巻く’に由来し、穀粒が内外の果頴に固く抱かれていることによる)に訂正された。和名のかもじ草は牧野によれば、女の子が若い葉を集めて揉み、女の雛人形を作ったことによるとしている。また、子供がこの株を取り、かもじ(付け毛)を作って遊んだことからともいわれている。

<共通点>
多年草で、株は叢生し、花期は5~7月。

<見分け方>
葉鞘の毛、葉舌の長さ、花穂の垂れ方、芒の有無、内頴と護頴の長さの違い、護頴の毛の有無などにより見分ける。詳しくは写真下の解説参照。

<その他の類似雑草>
スズメノチャヒキ Bromus japonicus Thunb.
:一年草で、高さ30~60cm全体に軟毛が有る。スズメノチャヒキ(雀の茶挽)の名は、花穂がチャヒキグサ(=カラスムギ)に似ていて小さいのでついた。円錐花序をつけて一方に傾き、小穂は淡緑色のはじめ円柱形で、後にやや扁平になる。葉舌は半円形で長さ2~3mmほど。護頴には芒がある。

ノゲイヌムギ Bromus sitchensis Trin.:北アメリカ原産多年草。叢生して高さ80~150cm。小穂は扁平で、護頴の先には短い芒があり、開花時にはおしべが垂れ下がり、葯は黄色。

タチカモジグサ Elymus rancemifer (Steud.) Tsvel. var. japonensis (Honda) Osada:アオカモジグサの一型で花穂がほとんど直立し、護頴が無毛またはへりだけに毛があるもの。

<発生生態>
出穂後葉が枯れ、秋に種から発芽するものと、前年の株から新芽が出るものがあり、越冬。枯れた芝の中で緑が目立つ。ラフなどによく見られる。初夏には再び出穂。

<防除法>
これらの雑草は刈り込み頻度の高い所や、低刈をしている場所で大発生することはほとんど無いと考える。しかしティグランド周りや法面ラフなどでは発生することもあるので、発生が見られたら株化する前にイネ科雑草に有効な茎葉処理剤を処理する。芝生に薬害が出た場合に問題とならない場所であれば、冬期に非選択性の除草剤処理も有効と考える。

<参考文献>
長田武正著:原色日本帰化植物図鑑(1976,保育社) 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七編著:日本帰化雑草植物写真図鑑(2001,全国農村教育協会) 廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン) 牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館) 浅野貞夫・廣田伸七編著:図と写真で見る似た草80種の見分け方(2002,全国農村教育協会) 大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物Ⅰ(1967,保育社) 林弥栄総監修/畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道監修:野草見分け方のポイント図鑑(2003,講談社) 浅野貞夫著:浅野貞夫 日本植物生態図鑑(2005,全国農村教育協会) 清水建美編:日本の帰化植物(2003,平凡社)

イヌムギ Bromus catharticus Vahl


株:高さ40~100cm。(写真は5月)
花穂:円錐花序 

秋に発生し、株となって越年する。下方の葉鞘には白色の長毛有り。(写真上は4月) 
小穂:大きく扁平。
小花:小花から葯はでず、自花受粉する。
護頴の先はごく短い芒かほとんど芒とならず。

葉舌:透明で長さ3~5mmあり目立つ。

地下部


カモジグサ Elymus tsukushiensis Honda var. taransience (Hack.) Osada


株:高さ50~100cm。(写真は5月)
葉:やや白味を帯びる。
花穂:穂状花序で、曲がって垂れ下がる。

花穂:10~20個の小穂が2列につき紫色を帯びる。(緑色のものもある。)
小穂:イヌムギの小穂に長い芒がついているような感じで、中軸からばらける。

葉:葉舌は短く目立たない。

小花:護頴と内頴の長さ変わらず。護頴には毛がない。
暗褐色の長い芒があり、芒には刺毛がある。


アオカモジグサ Elymus rancemifer (Steud.) Tsvel.


花穂:穂状花序。カモジグサほど垂れ下がらず、色も緑。
小穂:あまりばらけず、まとまった形  (写真は6月)

護頴の先の芒は小穂が枯れる頃乾いて強く外側に反り返る。(写真は6月)

葉:葉舌は短く目立たない
  葉は鮮やかな緑色

小花:内頴は護頴より短く、先が丸い。
   護頴には表面にまばらな毛がある。



<参考文献>
長田武正著:原色日本帰化植物図鑑(1976,保育社)
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七編著:日本帰化雑草植物写真図鑑(2001,全国農業教育協会)
廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン)
牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館)
浅野貞夫・廣田伸七編著:図と写真で見る似た草80種の見分け方(2002,全国農村教育協会)
大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物Ⅰ,Ⅱ(1967,保育社)など
大井次三郎著:日本植物誌 顕花篇(1978,至文堂)
林弥栄総監修/畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道監修:野草見分け方のポイント図鑑(2003,講談社)
長田武正著:野草図鑑③すすきの巻き,④たんぽぽの巻(1984,保育社)
浅野貞夫著:浅野貞夫 日本植物生態図鑑(2005,全国農村教育協会)
清水建美編:日本の帰化植物(2003,平凡社)

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