雑草DB

芝地の雑草の見分け方と防除 (16)


-カラスノエンドウの仲間-

<はじめに>
前(ターフニュースNo.103(2008-May))にマメ科(Leguminosae)のヤハズソウ属(Kummerovia)とハギ属(Lespedeza) について記述したが、今回はソラマメ属(Vicia)について述べる。

カラスノエンドウVicia angustifolia L.は植物学的にはヤハズエンドウが標準的な和名であるが、カラスノエンドウ(同名異物がある)という名が一般的には定着している。カラスノエンドウ(烏野豌豆)の名はスズメノエンドウ(雀野豌豆)よりも花や実が大きいことからか、果実が熟すと真っ黒になるためにつけられたと思われる。ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)の名は小葉の先端が矢筈(やはず)(矢を弦にかける部分)形にへこむために付けられた。中には先端が矢筈状にへこまずに尖り、葉が全体的に細いタイプのホソバヤハズエンドウや通常花は赤紫色だか、白いシロバナヤハズエンドウもある。昔は若芽や果実を食用としたようである。

スズメノエンドウの種名のhirustaは‘毛がたくさんある’の意味で、果実や茎に毛のあるためと思われる。和名(雀野豌豆)は、全体が小さいために名づけられた。

カスマグサの種名のtetraspermaは‘4個(tetra)の種子がある’という意味で、命名された個体が1つの果実中に4個の種子を入れていたためと思われる。和名はカラスノエンドウとスズメノエンドウの中間、「カ」と「ス」の間(カスマ)の意。

<共通点>
越年生つる性草本。茎は四角柱状で、根元から分枝する。葉は偶数羽状複葉で、先は巻きひげとなり、基部には托葉がある。花は蝶形。

<見分け方>
見分け方のポイントをまとめると写真下の説明のようになる。小葉の大きさ、幅、先端の形。巻きひげの分枝。托葉の蜜腺の有無。花の大きさ、色。果実の大きさ、毛の有無。種子の数などで見分ける。

<発生生態>
秋に発芽するが、カラスノエンドウは種子サイズが大きく、地表面下10cm前後からでも出芽するため、発生は不斉一で長期にわたる。年を起こして春になって生育旺盛となり、4月~6月にかけて開花、結実する。熟すと果皮(さや)が2裂し、種子をはじき飛ばし広がる。夏には枯れるがそれまでに種子を落とさないよう刈り取る。

本来蜜腺は花の中にあるが、カラスノエンドウの托葉には花外蜜腺があり、アリを惹き寄せ、カラスノエンドウを餌とする虫の幼虫を捕食してもらう関係があるといわれている。               (宮島)

<防除法>
例年発生の多い場所には、秋期の発生前に広葉雑草に有効な発生前土壌処理剤や茎葉兼土壌処理剤を処理する。3~4月頃になると急激に成長し繁茂するので、発生が見られる場合には種子を付けるまでに茎葉処理剤を処理する。日本芝の萌芽前であればホルモン剤が効果的である。  (森)

<参考文献>
牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館) 大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物Ⅱ(1967,保育社),日本植物誌顕花篇(1978,誠文堂) 長田武正著:原色野草観察検索図鑑(1981,保育社) 廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン) 日野東解説:ポケット図鑑日本の野草・雑草(2003,成美堂) 林弥栄総監修/畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道監修:野草見分け方のポイント図鑑(2003,講談社) 浅野貞夫・廣田伸七編著:図と写真で見る似た草80種の見分け方(2002,全国農村教育協会) 浅野貞夫著:浅野貞夫 高橋勝雄解説:山渓名前図鑑野草の名前春(2005,山と渓谷社) 岩槻秀明著:街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本(2008,秀和システム)

カラスノエンドウ Vicia angustifolia L.


生活型:越年草 (写真左:1月、中、右:4月) 全株有毛。

托葉:葉の基部に1対の托葉があり、その表面に暗紫色の花外蜜線がある。

葉:8~16個の小葉をつけ、小葉の先端は矢筈(やはず)(矢を弦にかける部分)形に凹む。

花:葉腋に無柄の赤紫色の蝶形花を1~3個着ける。

果実:長さ3~4cmで無毛。熟すと黒くなり、さやが2片に裂けてよれ、中の10個内外の種子をはじき出す。


スズメノエンドウ Vicia hirusta S.F.Gray


生活型:越年草。(写真は左:3月、右:4月)

葉:カラスノエンドウより細い小葉を8~16個着ける。先端は伸びて分枝した巻きひげとなる。小葉の先端はくぼむか切り形。

托葉:小さく、多くは細く4裂する。蜜腺はない。

花:葉腋から長い花柄を伸ばし、白から淡い紫色の蝶形花を3~4個着ける。

果実:さやには短毛があり、2種子を入れる。


カスマグサ Vicia tetrasperma Schreb.


生活型:越年草(写真は5月)

葉:8~12個の小葉があり、先端は巻きひげとなるが分枝しない。小葉の先はくぼまず、尖っている。
托葉:小さく、蜜腺はない。

花:葉腋から長い花柄を伸ばし、1~3個の薄青紫色の蝶形花をつける。

果実:さやは無毛で偏平。中に3~6種子を入れる。

左:カラスノエンドウ 
中央:カスマグサ 
右:スズメノエンドウ
        カスマグサは葉の大きさは中間型で、茎は細い。



<参考文献>
長田武正著:原色日本帰化植物図鑑(1976,保育社)
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七編著:日本帰化雑草植物写真図鑑(2001,全国農業教育協会)
廣田伸七編著:ミニ雑草図鑑(1997,株式会社理研グリーン)
牧野富太郎著:牧野新日本植物図鑑(1961,北隆館)
浅野貞夫・廣田伸七編著:図と写真で見る似た草80種の見分け方(2002,全国農村教育協会)
大井次三郎著:標準原色図鑑全集9植物Ⅰ,Ⅱ(1967,保育社)など
大井次三郎著:日本植物誌 顕花篇(1978,至文堂)
林弥栄総監修/畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道監修:野草見分け方のポイント図鑑(2003,講談社)
長田武正著:野草図鑑③すすきの巻き,④たんぽぽの巻(1984,保育社)
浅野貞夫著:浅野貞夫 日本植物生態図鑑(2005,全国農村教育協会)
清水建美編:日本の帰化植物(2003,平凡社)

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