細菌病
目次
1細菌病
芝草に発生する細菌病として、日本国内では以下の5種類が確認されている。
| 病害名 | 褐条病 | 株枯細菌病 | 葉鞘腐敗病 | かさ枯病 | 葉枯細菌病 |
|---|---|---|---|---|---|
| 英語名 | Brown Stripe | Bacterial Foot Blight | Sheath Brown Rot | Halo Blight | Bacterial Leaf Blight |
| 学名 | Acidovorax avenae subsp. Avenae | Burkholderia plantarii | Pseudomonas syringae pv. atropurpurea | Pseudomonas syringae pv. atropurpurea | Xanthomonas sp. |
いずれも寒地型芝草を主な宿主とし、日本国内文献では総称して「細菌病」として扱われることもある。
2細菌病の共通特性
病減菌の性質
細菌(バクテリア)は0.5〜1.5μm程度の単細胞生物で、鞭毛を持ち水中を移動できる。芝草の細菌病では、多くの菌が葉組織の導管または細胞間隙で増殖する。
侵入経路
・刈込みや踏圧による傷口
・気孔などの自然開口部
・コアリング等の更新作業直後は侵入リスクが高まる
伝染要因
・降雨・風雨による飛沫伝染
・灌水設備・機械(特にモア)を介した二次伝染
・感染残渣・雑草を介した越冬・伝染
診断上の共通事項
・病徴のみでは糸状菌病害との識別が難しい
・現場診断では細菌の菌泥の顕微鏡確認が基本となる。より詳細に病原菌を同定する場合は、細菌分離培養やPCR等が必要
3各細菌病の詳細
1褐条病(Brown Stripe)
病徴
- 罹病葉に水浸状病斑および葉脈方向に伸びる長い病斑が現れる
- 芝面のパッチは、初期には病斑周縁が不明瞭な黄緑〜黄色、または暗緑色の水浸状を呈し、その後褐色に変化して壊死する。最終的には不整形の褐色パッチとなる
発生時期・条件
5〜9月頃の梅雨期〜夏の高温期にかけて発生しやすい。温暖多湿、日照不足、低刈りが助長要因となる。
2株枯細菌病(Bacterial Foot Blight)
病徴
- 葉身の一部が白色〜乳白色に変色し、円形〜楕円形の白化パッチとして現れる
- 特に展開中の新葉で白化が目立ち、成熟した葉では緑色〜褐色を呈する
- 発生が進むと白化した葉が増え、パッチ全体が白く目立つようになる
発生時期・条件
高温期に発生しやすく、特に気温25〜32℃で発病しやすい。
3 葉鞘腐敗病(Sheath Brown Rot)
病徴
- 床土(目土)に埋もれた下位の葉鞘が褐変・腐敗し、次第に上位の葉鞘へと症状が進展する
- 葉鞘の褐変に伴って葉身が黄化し、その後枯れ上がる
- 葉身に直接感染した場合には褐色〜黒色の壊死斑を形成し、重症化すると株全体が褐変・腐敗する
発生時期・条件
低温多湿、特に冷涼期で発生が助長される。
4かさ枯病(Halo Blight)
病徴
- 葉身の傷口付近に水浸状の小斑点が生じ、その後黄〜黄橙色の病斑へと拡大する
- 病斑はやがて壊死し、病原細菌の系統によって黒色または赤色を呈する場合がある
- 病斑の周囲には黄色〜黄橙色のハローが形成されるのが特徴
発生時期・条件
冷涼期に発生し、晩秋〜春期、特に早春期に発生が多く激しい傾向。
5葉枯細菌病(Bacterial Wilt / Bacterial Leaf Blight)
病徴
- 黄色〜黄白色の円形または不整形のパッチが生じる
- 罹病葉は葉先から黄化または黄白化が進み、その後褐変・枯死に至る
- 病原細菌が葉の傷口や気孔から侵入し導管内で増殖するため、葉の萎凋が生じる
発生時期・条件
真冬を除き年間を通じて発生の可能性があり、特に春季と秋季に多い。
4防除
耕種的防除
環境の改善:エアレーション・排水改善・通風確保で芝が長時間濡れない環境を作る。日照不足時は樹木剪定、通風不良時は送風機を利用する。
施肥管理:急激な窒素施用を避け、栄養バランスを保つ。極端な窒素不足も避ける。
水管理:多量少回数の潅水で根の発達を促し、葉面の長時間濡れを避ける。刈込みは葉面が乾いた状態で行う。
刈高と踏圧の管理:極端な低刈りを避け刈込頻度を減らす。動線を分散し物理的ストレスを軽減する。発生グリーンには専用の軽量モアを使用し伝搬を防ぐ。
作業管理:発生期間中はコアリング・目土散布など傷口をつくる作業を控える。避けられない場合は事前に予防散布を行う。
薬剤防除
予防的散布:発生時期および更新作業の前に散布する。特に毎年発生するグリーンには予防散布を行う。
薬剤選択:芝草の細菌病に対する国内登録殺菌剤は限定的で、銅剤・抗生物質系薬剤による予防処置が中心。
ローテーション散布:同一系統の薬剤を連続使用すると耐性菌が生じやすいため、系統の異なる薬剤を組み合わせて散布する。効果が低下した場合は薬剤感受性の低下を疑い、薬剤を変更する。
5参考写真
罹病葉