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目次

1炭疽病



病名 炭疽病(寒地型芝草)
英語名 Anthracnose
学名 Colletotrichum sp.
病原体 菌糸幅2.2μm~3.4μm,平均2.5μm
分生子:22.5×3.8μm



2病原菌特徴


病徴

 炭疽病の初期症状は、芝の一部が黄色〜褐色、赤褐色に退色するところから始まる。病斑は境界が不明瞭で、周囲とぼんやり混ざり合いながら広がり、乾燥や高温の影響を受けやすい。進行すると葉先から枯れ上がり、葉身は柔らかく折れやすくなり、複数の斑が連結して不規則なパッチを形成する。これがいわゆる葉枯型で、葉面に黒い点状の分生子層と剛毛が後期に見られることがある。
 一方、病原が地際部に達すると株枯型と見なす。冠部や葉鞘が暗褐色〜黒色に変色し、株全体の支えが弱くなるため、軽く引くだけで抜け落ちるほど弱くなる。外見上は葉の黄化だけに見える場合でも、内部では冠部の腐敗が進んでいることが多く、回復に時間がかかるのが特徴である。
 炭疽病は葉先の急速な枯死と基部の暗色化が典型的で、葉部から冠部へと段階的に症状が進む点が大きな特徴となる。


発生時期



 炭疽病は早春から晩秋にかけて発生する。発病は特定の季節に限定されず、気温、水分条件、芝草のストレス状態に左右される。芝生が高温・乾燥や踏圧、養分不足などのストレス下で症状が現れやすく、冷涼期でも過湿や排水不良が重なると発病する。症状は環境条件により変化し、低温期は黄色が強く、高温期は赤褐色が目立つ傾向がある。雪解け直後や急激な温度変化時に、潜在感染が顕在化する場合もある。


発生条件

 病原菌自体は芝生に広く生息しており、芝が弱まるとともに病勢が顕著になる。
発生を助長する条件には
・乾燥ストレス/水分不足
・過湿・排水不良(土壌が固結し、根が浅い状態)
・窒素、カリ不足などの栄養バランス不良
・踏圧・機械作業の集中、過度な低刈り
・通気性不良、日陰、湿度の滞留
・サッチの蓄積や不均一な根茎層
・他病害との複合ストレス(ピシウム、細菌性病害など)
など多い要因があるが、要は芝生がストレスを受けることである。
 病原菌は感染葉や刈りかすに残る菌糸で越冬し、湿潤条件下で分生子を形成する。形成された分生子は、雨滴・灌水・人や機械の移動によって拡散し、管理頻度の高いグリーンでは連続して感染が起こりやすい。




防除


耕種的防除

環境の改善:過湿や排水不良は炭疽病を助長するため、エアレーションや表層の通気改善を行い、芝が長時間湿らない環境を作る。日照不足や風通しが悪い場合は、樹木の剪定、送風機の利用などで環境を整える。
施肥管理:窒素が不足すると発病が促進されるため、窒素の不足に注意する。カリの補給も防除につながるため、必要に応じて補給し、全体的な栄養バランスを保つ。
水管理:乾燥や過湿のどちらも発病を促すため、多量少回数の潅水で根の発達を促し、葉面が不必要に濡れたままにならないよう注意する。
サッチ管理と通気性の確保:過剰なサッチは病原の温床となるため、定期的なバーチカル、エアレーション、目土作業で物理的管理を徹底する。
刈高と踏圧の管理:低刈りは芝を弱らせるため、病害が出やすい時期は刈高をやや高めに設定する。作業や通行が同じ場所に集中しないように動線を分散し、物理的ストレスを減らす。


薬剤防除

予防的散布:発生が見込まれる時期より前に薬剤を散布しておくことで、初期感染の定着を抑えられる。特に芝がストレスを受けやすい季節(梅雨時期や夏など)に入る前の予防散布が効果的である。本病に続いてダラースポット、葉腐病(ブラウンパッチ)、赤焼病やピシウム病が発生してくるので、これらに有効な混合剤を用いるとよい。
発生後での対応:浸透移行性の殺菌剤が効果的であるため、DMI剤やSDHI剤、QoI剤を使用すると良い。また、浸透移行性の殺菌剤と接触性の殺菌剤(マンゼブやTPNなど)を混合して散布すると予防及び治療に効果的。
ローテーション散布:炭疽病の病原菌は耐性を獲得しやすいため、同一系統薬剤の連続使用は避け、FRACコードを確認しながら異なる系統での散布を行う。効果が低下した場合には、薬剤感受性の低下を疑い、薬剤を変更する。




4参考写真


初期症状(上井政文氏提供)

診断の目安になる剛毛や分生子盤(層)(矢印)

発生中期、薬剤防除が可能な限界症状

剛毛が未発達の分生子盤(層)

分生子盤(層)の分生子形成細胞の先に生じた分生子(矢印)

激発状況(張り替えになることもある)

葉鞘部によく見られる付着器


ベントグラス(ペンクロス)を播種直後のグリーンに発生したピシウム菌による苗立枯病(この場合、根部は淡褐色で水浸状に軟化、消失していることが多い)

散水むらによる乾燥害(手前)

コガネムシの幼虫による食害
(山田 明氏提供)

炭疽病が発生していた個所(短い矢印)に新たに葉腐病(ブラウンパッチ)が発生してきた(長い矢印)(前者のパッチは白味を帯びて回復中であり、後者のパッチは黄褐色を呈していて進行中)


初期症状の外周部
(葉面の病徴をよく観察すること)


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